そしてゴールデンウイーク前日となった。

 今日はゴールデンウイーク前最後の登校日、気分は浮かれながら登校をした。

 だが、年号が変わるので今年は10連休もあるのだ。

 その間、満里奈先生とは会えないので残念だ。

 会えなくてという歌のフレーズが頭の中を何度も往復する。

 バスの中、古典の追試の問題を読んでいた。

 今日は珍しく座席に座れたのだ。

 すると、聞きなれた声がした。

 顔を上げると満里奈先生だ。


「おはよ」

「お、おはよ」


 先生にタメ口何て本当にいいのかしら?

 ちょっと良識が痛む。


「朝から勉強、えらいわね」

「先生は何か眠たそうですね」

「昨日は、録画していたドラマを見ていたの」

「そ、そうですか」


 教師でもドラマは見るのだろうが、こちらは勉強をしてやりたい事をやっていないのにそういう話題は勘弁して欲しいと思った。

 それでも仲良くなれるチャンスなので我慢して会話をする事にした。


「何のドラマ、見たんですか?」

「3年A組・真理子先生よ」

「先生でもあんなの見るんですか」

「あんなのってひどくない!」


 えっ、満里奈先生のキレどころはここだったんだ。

 慌てて謝り、事態は沈下した。

 隣にいたお年寄りは完全に驚いていた。


 満里奈先生曰く、eastの大ファンでメンバーのタカヒロが出ているので見ているとの事だ。

 決め台詞は「あたいの生徒に手を出すな!」だ。

 内容はお察しの通りである。



「優花里ちゃんはテレビ見るの?」

「いいえ。今の子はテレビ何て見ませよ」


 えっと、満里奈先生は驚いた表情をしていた。

 ゼネレーションギャップを味わっている感がバリバリ出ていた。


「スマホでYouTubeとかLINEやっていますんで」

「あー。そうなんだ。さすが、若いわね」

「もうおばさんですよ」

「優花里ちゃんがおばさんだったら私は……」


 青ざめる満里奈先生、顔に両手をつけ、肌を触り始める。

 あっ、ちょっとかわいそうな事を言ったかなと思った。

 今日の優花里はイライラしているのか、失言が多い。


「じゃあ。ドラマはどうやってみるの?」

「公式アプリの動画視聴サイトですね」

「へぇ。そんなのあるんだ、教えてよ」

「いいですけれど」


 こいつは絶対にはまるぞ……。

 はまるよりものめり込んでいる満里奈先生を想像してしまった。

 大丈夫かな。

 そんな会話をしているうちにバスは学園前に到着をした。

 この時間帯はまだそんなに混んでないから助かるわ。

 

 教室に到着すると紀香と同時刻の登校だった。


「おはよう」

「おはよう……」


 

 最近、紀香も私に対する態度が冷たいんだよね。

 なんでだろう……。

 せっかく、友達なのにあれ以来会話がないし。

 ひょっとして私が不甲斐ないせいかな。

 オール5の人だし、そういう事もあり得る。


「明日からゴールデンウイークね」

「ええ、私はもうやる事が決まっていて」

「どこか行くの?」

「ハワイの方へ」

「さすが、やっぱり紀香の家って金持ちなの?」

「その話題はしたくないんだけれど」

「ご、ごめん」


 うわぁー。

 やってしまった、本日2度目の失態。

 満里奈先生の時に続いて友達の前でも失態をしてしまった。

 今日は厄日だ……。

 

 この会話を聞いていたのか明子に呼ばれた。


「ねぇ、優花里。紀香の家って佐々木コンチェルンよ」

「マジでー」

 優花里は驚いた。

 テレビCMをやっている会社の社長の娘だったのだから。

 しかし、なぜ今まで隠していたのだろう。

 まあ、仲良くなって1か月未満の友達に会話をする必要もない。

 そういうえば紀香が入学式の時、新入生代表で挨拶をしているのを今、思い出したのだ。

 ニシジョには金持ちもいると聞いていたけれども友達がまさか金持ちだったとは。

 小説の才能もあって成績優秀で凄い。

 だが、優花里が何で知らなかったのかは不思議だ。

 女子の情報網はすごいなと思った。

 まあ。紀香も仲良くなったから、他の人には会話をしたのだろう。

 紀香グループも結構いるみたいだし。

 私とは住む世界が違うのだろう。

 嫌われない様についていくのが精いっぱい……。

 半ば嫌われているからついていけていないのが現実だ。


「教えてくれてありがとう」

「ちなみに私はSテニススクールの南条浩二と付き合っているから」

「ひょっとしてすごいの?」

「はぁ……あなたって人はこの学校の事なにも知らないのね」

「ごめん。小説に追われてたから」

「チャイムが鳴る時間だわ」

「あ、本当ね」


 明子は目を細めながら優花里をまじまじと見た。

 この学校で紀香の事を知らない人はモグリね、と言わんばかりに。

 授業中、考えた。

 確かに今まで何も私の事もしゃべってきていないので真剣な友達は誰1人作れていないんだ。

 小説が村瀬部長に認められたので偶然、いじめに合わなかっただけでカーストが低い生徒は既にターゲットにされている。

 これからは小説以外にも目を向けよう。おちおちしていられないと思った。


 昼休み、紀香が席で整理整頓をしていたので朝の事を謝罪するチャンスだった。


「紀香、朝はごめんね」

「あなたって純粋なのね」

「え、ええ」

「この学校の生徒は皆、佐々木コンチェルンの娘として見ていると思っていたのよ」

「そうなんだ」

「私にとってあなたは紀香だから」


 その言葉を聞くと紀香は目を輝かせて握手を求めてきたのだ。

現在、連載中の女子高校生と女教師の恋を「満里奈先生と危険な恋」に変えました。
タイトルを変更できるのはネット小説の強みだと思います。
何卒、よろしくお願いいたします。

 それから翌週の金曜日になった。

 4月中旬も終わりの日だ。

 相変わらず、わとツンデレで返している。

 そのうち、性格も変わりそうな気がしてきた。

 時折、満里奈先生はショックな表情をするがそれでもめげない。

 めげずに食らいついてきている。

 Mなのかと思ってしまうくらいに……。

 優花里が昼休み、教室で休憩をしていると紀香と明子が絡んできた。

 明子もカーストが高い方だ。


「ねぇ、最近、満里奈先生に冷たくない?」


 明子は学食で買ってきたカレーパンを食べながら口を開く。

 あぐらをかきながら椅子に座っている。


「そ、そう?」


 すかさず、弁当を食べている紀香が攻撃をしてくる。

「最初はわざと遠ざけてると思ったら本格的に嫌ってるみたいよ」

「そ、そんな事ないよ。むしろ良い先生だと思うよ」


 学食で買ってきたメロンパンをパクリとくわえながら反論をした。

 ここで正直に好きとは言えないところがこの恋の難しさなのである。

 ここまで徹底して嫌ったら女性は勘ぐる。

 裏に何かがあるのではないのだろうかと。


「じゃあ、もうちょっと普通に接しなさいよ」

「そうよ」


 この2人にはかなわないので、言われた通りにすることになった。

 カーストが高い2人の命令を断ったら他のクラスメイトにあとで何をされるか分からないからだ。

 女子校なのでこういうところはものすごいシビアである。

 女性特有のねちねちした嫌がらせの標的にもなる可能性があるのだ。


 そして次は古典の授業、満里奈先生の授業だ。

 さすがに授業中は満里奈先生の標的にならずにすんでいた。

 優花里ばかり当てていたら、他のクラスメイトにこれまた、えこひいきだなんだと騒がれるからだ。

 この時間だけは当てられないので素直になれる時間帯でもある。


 チャイムが鳴り、満里奈先生がやってきた。


「起立! 礼!」


「着席」と着席の部分は満里奈先生が言うのである。


 早速、誰にも気が疲れない様に目線だけ優花里と合わせている。

 これは好きな優花里にとっては天国の様な時間だ。

 

「では、田伏さん。この問題を答えて」

「えっ、はっ、はい」


 不意打ちーーーー。

 最近は完全に当てられていないので、安心を仕切っていた。

 勉強もあまりしていない教科だ。

 まずい、適当な答えを言うか、それとも正直に分かりませんというか。

 悩んでいる時間は長く感じる、実際には何分という短い時間帯だけれども、神様は意地悪だ。


「はい。時間切れーーーー」


 満里奈先生は残念がってため息をつく。

 肩をオーバーに落として見せた。


「え……」


 あまりにも予想していない態度に拍子抜けをして席に座る。

 紀香が正解を答えて、拍手が沸く。

 さすが体育以外オール5。

 けれども、満里奈先生、答えられなかったからって露骨に不機嫌になることないでしょ。

 めっちゃ、睨んでくるし。

 好きな人にこういう態度を取られると応える。

 最近は小説ばかりだったからなー、勉強もしないと。

 審査員にまで抜擢しておいて勉強もがんばれというのはちょっと大変ではあるが、まあやれない事もないと思っていた。

 村瀬部長のおかげで審査のやり方にも慣れたのである。

 小説は公募に提出すると下読みというのがいてその人が送られてきた小説を読み、選別するのだ。

 優花里はその役割を担っている。


 そして授業も終わり、帰りのホームルームになった。

 ニシジョは進学校だからすぐに勉強においていかれる。

 優花里は午後の授業はみんなぼろくそだったのだ。


「早速ですが、学校が始まり、1週間が経過したので成績の悪い人には補習を受けて貰います」

「はぁ」


 クラスメイトは一斉に、ブーイングの嵐となった。


「高校は義務教育じゃないから、落第があるの。ウチのクラスから出さない様に先生も心を鬼にして補習をやる事にしたの」


 クラスメイトが満里奈先生の演説まがいのコントに爆笑した。

 まあ、このクラスは優秀な人材が多いから補習なんて必要なさそうだけれどもね。

 打倒A組なんて掲げているくらい。

 どこの荒川を舞台にした学園ドラマだよと思うくらいの目標だしなあ。

 あれには笑ってしまった。


「補習する人は! 田伏優花里さん!あなたです!!」

「え……」


 まさかの1人で頭の中が真っ白となった。

 確かにサボっていた自分が悪いんですけれどもこれはさすがに酷い仕打ちじゃあないんですか?


「え……あの、他にメンバーは?」


 青ざめた優花里が満里奈先生に喰ってかかる。

 マジ、焦っている。


「いません。赤点に近い生徒はウチのクラスではあなただけですよ」

「そ、そんな……」


 膝からガクリとなり、席に座る。

 木の椅子がみしみしと言った。

 こんな事が知れたらお母さんから間違いなく説教される。

 最悪だーーーー。

 恋に部活にうたた寝をぬかしている場合ではなかった。


 放課後、ゴールデンウイークまで部活禁止礼を出された優花里。

 部室の隅っこで満里奈先生と補習をやる事となった。


「さてと、これから補習をやりましょうか?」

「は、はい……」


 しかし、これはこれでおいしいシチュエーションではないかと思ってしまうのが優花里のノー天気さを表しているところだ。

 優花里と満里奈先生、教師と生徒でなかったら本当に付き合っているかも知れないと考えてしまった。

 優花里は補習開始から30分、満里奈先生の香水の匂いを嗅いだりと完全に集中できていなかったのだ。

 

「うーん、そろそろ休憩にしましょうか?」

「やったー!」


 優花里は気分転換ができるので喜んでいたら、満里奈先生に釘をさされた。


「全然、出来ていないから休憩をするんですけれど」

「ご、ごめんなさい」


 紀香がはぁ……と呆れた表情でこちらをみていた。

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